平野 健一郎
昨年の秋、一人は審美障害で、もう一人は顎関節痛を訴えて、立て続けに二人の開咬の方が受診されました。診査の結果、お二人とも審美障害と顎関節症の両方を抱えておられました。
主訴は違ってもほぼ同じ病態であるこのお二人が矯正だけ、あるいは顎関節症だけの治療を受けたとしたら、それで最良の結果を得ることができるでしょうか?
咬合療法研究会における咬合療法は『包括歯科臨床』を出自としています。包括歯科臨床は生体の表しているサインや様態を可能な限り配慮して、原因を成している負荷を軽減もしくは除去することによって患者自身の治そうとする力を引き出し、そうしながら(なるべく小さな介入で、しかし出来る限り的確に)治療介入を行う、というものです。
こうした背景から、咬合誘導、咬合再構成の場面で咬合の関与しないケースは皆無と言ってよいことが知られ、それを元に一歩踏み込んで咬合を軸に歯科臨床を捉える体系が構築されてきました。それが咬合療法研究会の咬合療法です。
従って咬合療法は、従来の顎関節や歯牙接触を中心とした咬合への取り組みの枠を超えて歯周療法、インプラント、矯正、補綴など日常臨床に必要とされるほぼ全域の診療の考え方と治療手法に亘って臨床展開されます。
あれもこれも……という事になると、難解で複雑であるように感じられるかも知れませんが、実はこれが最も確実で最短の咬合治癒へ道だと言えます。
皆様と一緒に学ぶことが出来れば幸甚に存じます。
2010年5月